自分の帳簿を眺めていてふと、「アマゾンから受け取るロイヤルティ(電子書籍のロイヤルティ)」の消費税の取り扱いってどうなるんだろう?」と疑問に思ったので、ちょっと調べてみました。
先日会った神戸の税理士さんと、グーグルアドワーズやグーグルアドセンスの消費税の取扱いってどうなるんだろうという話をしていたのですが、アマゾンからいただくロイヤルティは消費税的にどう扱われるのでしょうか?
まずはおさらい。著作権の消費税の課税関係がどうなるかです
著作権は、法4条で国内において譲渡等が行われた場合には課税の対象となるとされます。そして国内外判定を行う施行令6条7項において、著作権の譲渡・貸付を行う者の住所地とされます。
(課税の対象)
消費税法第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。
3 資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。ただし、第三号に掲げる場合において、同号に定める場所がないときは、当該資産の譲渡等は国内以外の地域で行われたものとする。
一 資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所(当該資産が船舶、航空機、鉱業権、特許権、著作権、国債証券、株券その他の資産でその所在していた場所が明らかでないものとして政令で定めるものである場合には、政令で定める場所)(資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定)
消費税法施行令第六条 法第四条第三項第一号 に規定する政令で定める資産は、次の各号に掲げる資産とし、同項第一号 に規定する政令で定める場所は、当該資産の区分に応じ当該資産の譲渡又は貸付けが行われる時における当該各号に定める場所とする。
七 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずる権利を含む。)又は特別の技術による生産方式及びこれに準ずるもの(以下この号において「著作権等」という。) 著作権等の譲渡又は貸付けを行う者の住所地
今回の私の場合、日本に住む私が譲渡等を行っているので、国内取引になり、課税の対象となります。
次に輸出取引に該当するかですが、施行令17条で非居住者に対する著作権の譲渡等は輸出取引等に該当し、法7条で免税になります。
(輸出免税等)
消費税法第七条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、消費税を免除する。
五 前各号に掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの(輸出取引等の範囲)
消費税法施行令第十七条
六 第六条第一項第四号から第八号までに掲げる資産の譲渡又は貸付けで非居住者に対して行われるもの
私の場合はAmazon Inc.というアメリカの会社に対して行っているので、免税(輸出取引)に該当します。
というわけで、非居住者に対する著作権の譲渡等は、通常免税取引になります。
さてここから本題
Amazonからの電子書籍のロイヤルティは、「電気通信利用役務の提供の対価」に該当するのでしょうか?
消費税法で「電気通信利用役務の提供」は、以下の様に定義されています。
(定義)
消費税法第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
八の三 電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号 (定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。
八の四 事業者向け電気通信利用役務の提供 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう。(電気通信利用役務の提供)
消費税法基本通達
5-8-3 電気通信利用役務の提供とは、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいうのであるから、例えば、次に掲げるようなものが該当する。(平27課消1-17により追加)
(1) インターネットを介した電子書籍の配信
(2) インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
(3) インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
(4) インターネットのウエブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
(5) インターネットのウエブサイト上に広告を掲載する役務の提供
(6) 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング
(注) 電気通信利用役務の提供に該当しない他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供には、例えば、次に掲げるようなものが該当する。
1 国外に所在する資産の管理・運用等について依頼を受けた事業者が、その管理等の状況をインターネットや電子メール(以下5-8-3において「インターネット等」という。)を利用して依頼者に報告するもの
2 ソフトウエア開発の依頼を受けた事業者が、国外においてソフトウエアの開発を行い、完成したソフトウエアについてインターネット等を利用して依頼者に送信するもの(事業者向け電気通信利用役務の提供)
5-8-4 事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供で、その役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいうのであるから、例えば、次に掲げるようなものが該当する。(平27課消1-17により追加)
(1) インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
(2) 役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの
(注) 消費者に対しても広く提供されるような、インターネットを介して行う電子書籍・音楽の配信又は各種ソフトウエアやゲームを利用させるなどの役務の提供は、インターネットのウエブサイト上に掲載した規約等で事業者のみを対象とするものであることを明示していたとしても、消費者からの申込みが行われ、その申込みを事実上制限できないものについては、その取引条件等からは事業者向け電気通信利用役務の提供に該当しないのであるから留意する。
法2条の定義だけを読んでもよく分かりませんが、通達で補完すると何らかの著作物をインターネットを経由して提供することなどが電気通信利用役務の提供に該当し、資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供をネット経由で行ってもそれは電気通信利用役務の提供には該当しないということですね。
私の場合、アマゾンが私の書籍を日本でネット配信する場合はこの電気通信利用役務の提供ですが、私がアマゾンに著作権の譲渡等を行う場合にはこれに該当しないので、ロイヤルティは今までと同じように免税取引(輸出売上)に該当するという事になりますね。
アマゾンやグーグルが絡んだ取引だと、何だか全て今回の電気通信利用役務の提供の課税の見直しの影響を受ける気がしますが、そうでない場合もあるということですよね。
免税と不課税を間違ってもさほど影響はありませんが、国内課税と不課税を間違うと影響があるので、注意したいと思います。