先週末、所属する若手税理士の団体の勉強会に出席してきました。
テーマは税理士には永遠のテーマとも言える、「給与と外注費の区分について」。
小さな会社から大きな会社までこの問題はしばしば関わってくるので、参加者の発言もどんどん飛び出して楽しい勉強会でした。
この議論の中で出てきた資料のうち、面白いなと思ったのが以下の鹿児島地裁の判例です。
国税庁HP「消費税及び地方消費税の更正請求に対してその請求をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件」
内容的には独立してすぐの税理士さんが本業の傍ら専門学校の税理士講座で講師をしていたのですが、その講師報酬を確定申告時には事業所得に含めて申告し、消費税についても課税事業者届出書を自分で出して消費税も申告・納税した後で、講師報酬は給与所得に該当し基準期間の課税売上高が1,000万円以下になるので更正の請求を行ったというものです。
判決文に出てくる「税理士講座レギュラーコース財務諸表論」や「税理士講座上級コース財務諸表論」という単語が、馴染み深くて生々しい感じです(^^;。
判決としては講師報酬は事業所得になり、更正の請求は認められないというものだったのですが、事業に該当するという理由は以下の様な感じです。
- 一番に当事者が、形式上請負契約か委任契約、それとも雇用契約を結んでいるのかという、形式的な基準で判断する。
- 当事者双方が契約を請負若しくは委任として認識していたとしても、その取引の実態が、役務の提供者が直接的な指揮命令下において一定時間役務を提供し、対価を得るようなものである場合には、形式的な取扱いのいかんにかかわらず、これを雇用に類する契約とみる。
という前提のもと、
ので、形式的には請負や委任に類する契約であるとされるということになっています。
また取引実態をみても、
- 講師料は、一定時間の役務の提供に対する対価というよりは、準備や指導に要する時間も含めた1回の講義を単位として支払われる対価というべきである。
- 一定のカリキュラムの設定や共通教材の使用は、資格講座という役務の性質上当然に予定されているのであって、裁量の幅が限定されていることから直ちに税額の転嫁可能性が否定されるような直接的な指揮命令関係が認められるわけではない。
- 講師側は講師料について交渉の機会を有していること。講師業務を引き受けるか否かについて、講師側の選択の自由度が比較的高いと考えられること。有資格者であることは一定程度講師料の額に反映するといえることから、講師料に課税した場合に、講師側において、その税額を講師料へ転嫁することがおよそ期待できないといい得るような事情は認められないというべきである。
請負と雇用の区別を考えるとき、提供場所が自社か外注先になるのか、作業時間の指定があるのか、材料や道具は支給されるのか、時間単位で提供されるのかということを考えます。今回のケースの場合、講義場所は専門学校で、講義の時間は指定され、カリキュラムやテキストも先方が準備し、時間単位で報酬を受けるという事実があると雇用かなと判断してしまいそうですが、こういう判断もあるのですよね。
逆に形式的に専門学校が給与として処理して、税理士さんも給与所得で確定申告していたら、結果はどうなったのでしょうか?やっぱり外注費と給与の区別は、ケースバイケースで個別にしっかり考えていかないとダメなのですよね。難しいです・・・。